1冊目 コーヒーが冷めないうちに 川口俊和
【あらすじ】
舞台は地下にある古く物静かなカフェ。
このカフェには時空を超えることが出来るという噂があり、連日客が訪れるのであった。
時空を超えるためにはいくつかのルールがある。決められた席、限られた時間などなど。
そしてこれらの条件の中で『恋人』結婚を考えていた彼氏とわかれた女の話。『夫婦』記憶が消えていく男と看護師の話。『姉妹』家出した姉とよく食べる妹の話。『親子』この喫茶店で働く妊婦の話。と4つのエピソードが展開されるのであった。どの話も決められた条件に則って、過去にも未来にも時空を超える。知らなかった何かを見つけるために。
しかし時空を超えた先で何かを変えたとしても、戻った現実を何1つ変えることはできない。これも条件の1つ。
そこで、主人公は心を変えて現実世界に戻り、未来を変えていったのである。
【感想】
カフェの中にいる人が順番に主人公になる構成であるために、最終的に全員の歴史がよくわかって面白い。最初の主人公がそれ以降のエピソードにも登場してきて、短編と思いきや、カフェの中の時間軸が一筋に流れていてそれもまた面白い。
過去に戻りたい人は、現状に後悔や不満があり、それを変えようと戻る。条件からそれらを変えることはできないのだが、戻った先で未来志向の重要なメッセージを手に入れる。そのメッセージにより現実世界でも前向きに生きていくことが出来た。
つまり自分の思い込みや妄想など一点から見るだけでは一面しか見ることが出来ない。ひとつの情報にすがりつくのではなく、様々な情報を疑い、どんな現実もポジティブに捉えていくことが大切。
事実は過去、その受け止め方1つで、いろんな未来を切り開くことが出来る。
そんなことを感じました!